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病原微生物汚染による食中毒のニュースが,テレビ,新聞,インターネット等で毎日のように報道されている.特に大きな事例として,汚染牛肉を生で喫食したことにより腸管出血性大腸菌O111に181人が感染,小児を含む5人が亡くなるという2011年の痛ましい事例1,2)が記憶に新しい.この事例の社会的な反響は大きく,その後,生食(ユッケ等)用牛肉の基準設定や牛レバーの生食の規制へとつながることとなった.翌2012年には白菜の浅漬けの喫食により腸管出血性大腸菌O157食中毒が発生し,169人が感染,127人が入院,8人が亡くなった3).また2014年には,花火大会の露店で販売された冷やしキュウリにより腸管出血性大腸菌O157に518人(2次感染者を含む)が感染し,5人が溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し重症化するという大規模事例が発生した4).このように大規模,かつ患者が重症化する食中毒事例が日本国内で多く報告されている.
大規模食中毒は国内で生産・加工された食品に起因するものだけとは限らない.近年,食品流通の迅速化や流通範囲の拡大が目覚ましく,このため,海外から大量の食品を輸入しているわが国では,海外から汚染食品が流入し,国内で食中毒が発生する可能性への注意および対策が必要となっている.国立医薬品食品衛生研究所安全情報部では国内の食品安全関連の情報に加えて,海外の食中毒事例や食品安全対策等の情報を日常的に収集しており,それらを日本語で要約し取りまとめた「食品安全情報」を隔週で当研究所ホームページに掲載している(http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html).また,特に社会的影響が大きい内容やわが国に関連する可能性が高い事例に関しては,集中して取りまとめ,特設ウェブサイトを介して継続した情報提供を行っている.本稿では,これらの収集情報の中から,今後わが国でも注意が必要な食品の把握や対策に関連した話題提供とすべく,生鮮野菜や果物といった喫食前に加熱調理を伴わない非動物性の食品による海外での最近の微生物関連大規模食中毒事例についてその一端を紹介する.
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