連載 リレー連載・列島ランナー・76
HIV感染症患者に対する地域歯科医療—自治体の役割とは
秋野 憲一
1,2
1前・札幌市保健福祉局保健所 歯科保健担当課
2現・厚生労働省老健局老人保健課
pp.497-499
発行日 2015年7月15日
Published Date 2015/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208225
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
ある実話
札幌市内には1,200か所以上の歯科医療機関があり,街中を少し歩けば視界に数軒の歯科医院の看板が目に飛び込んでくるような状態です.しかし,ほんの数年前の実際にあった話ですが,市内に住む20代の男性会社員が受診できる歯科診療所を見つけられず奥歯のむし歯を長年の間,放置していたため顔の半分が膨れ上がる重度の急性顎骨骨髄炎を起こして大学病院を受診しました.その男性会社員は血液製剤の薬害によるHIVキャリアであり,職場にもHIV感染者であることを秘密にしていたため,「むし歯治療で大学病院を受診するので平日日中に休みをください」と上司に言えず,結果として,重症になるまで放置してしまっていたのです.
これは歯科医院が溢れかえる札幌市で実際にあった症例であり,にわかに信じがたい話かもしれませんが,読者の皆さんの地域にも表面化しないだけで,様々な理由で診療してもらえる歯科医療機関を見つけることができないHIV感染者がいるかもしれません.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.