特集 地域医師会の新たな実践と展望
第一線医療における公衆衛生活動の実践
大腸がん検診
玉城 晴孝
1
Harutaka TAMAKI
1
1大阪市住之江区医師会
pp.607-610
発行日 1989年9月15日
Published Date 1989/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208014
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■はじめに
今日,地域医療を担う実地医家が直面している重要課題の一つは,プライマリ・ケア全般にわたって,その推進的役割を果たすことであろう.しかし,残念ながら,病院・診療所等の施設内医療に長く身を置き,受身的医療と出来高払い制医療に慣れ親しんで来た実地医家にとって,評価しにくい総括的医療の中心的役割を積極的に果たすべきであるとの自覚を医師自らが持ち,これを実践することはなかなか容易ではない.ましてや,第一線医療を担う開業医が減少し高齢化する中で,若手医師の多くが大病院を指向し(開業医の相対的低下),プライマリ・ケアの実践よりも"cure"のための医学・医療の専門的知識の吸収や,医療技術の修得,最先端医療の研究に関心を寄せている現状では,地域住民の肉体的,精神的,社会的福祉を包括した全人間的生涯(アルマ・アタ宣言)を全うしたいとの希求と権利に開業医集団が応え,これに貢献することは非常に困難と思われる.事実,私達も地域においてがん予防のための集団検診事業を実践することには非常な不安を覚えた.しかし,昭和60年以降,連続して大阪のがんによる死亡率が男女とも第1位であるだけでなく,検診受診率も低いという,冷酷な事実に直面する時,正直いって大阪に生活する医師として,一種の危機感を覚えずにはいられない.
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