特集 産業医学最近の話題
労働安全衛生法のシステム
岩尾 総一郎
1
Soichiro IWAO
1
1労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課中央労働衛生
pp.399-401
発行日 1988年6月15日
Published Date 1988/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207706
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労働安全衛生法成立までの経緯
昭和21年11月3日,日本国憲法が公布された.憲法第27条は勤労の権利と義務に関する条項であり,「賃金,就業時間,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める」とある.これに伴い,翌昭和22年4月7日,労働基準法が公布された.この法に定められた基準は最低条件であるので,当事者はこの基準を理由に労働条件を低下させてはならないことはもとより,その向上を図るように努めること(第1条),労働条件は労使双方が対等の立場で決定すべきものであること(第2条)などが明記されている.
労働基準法では第5章(第42〜55条)を「安全及び衛生」とし,危害防止措置や安全衛生教育等を規定していた.しかし,法律の義務主体を「使用者」とする労働基準法は,使用従属関係の存在する範囲にしか適用されず,複数の企業労働者が共同で作業する場所等では,最低基準の遵守のみならず,災害防止に関する責任が明確でなかった.そこで,労働災害防止対策を推進して労働者の安全と健康を確保すること,快適な職場環境を形成することを目的とした,労働安全衛生法が昭和47年6月8日公布され,労働基準法の「安全及び衛生」に関する条文は削除された.労働安全衛生法では,義務主体を「事業者」として責任の所在を明らかにする一方,第122条に両罰規定を設け,行為者も処罰されることとしている.
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