健康学習の試み・1
健康教育から健康学習へ
石川 雄一
1
Yūichi ISHIKAWA
1
1自治医科大学地域医療学教室
pp.203-208
発行日 1988年3月15日
Published Date 1988/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207651
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◇変化する保健医療ニーズ
現在,感染症,がん,循環器疾患の問題解決を目的として,各科の専門医が自分の守備範囲を狭めながらその専門的研究を続けている.一方,総合医療,保健・医療・福祉の統合化など,プライマリ・ケア医療の重要性が叫ばれ,両者の役割分担がなされようとしている.また成人病を中心とした慢性疾患の治療に限界がある現在,予防医学的アプローチの必要性が強調されている.老人保健法での健康診査,健康教育はまさにその代表といえる.
一方,マスメディアの発達により国民への健康・疾病に関する知識は,不十分ながら高まってきた.知識を習得した結果,疾病予防へ行動変容した人もいたが,反面頭の中で理解していても行動変容まで至らないケースに,私たち医療従事者は頭を悩まし始めた.例えば,たばこが人体に悪影響を及ぼすことは,ほとんどの喫煙者は知っていよう.しかし,人体に悪いと知りながらたばこを吸い続ける喫煙者に,更にたばこの肺がん,慢性気管炎に関する知識を伝達しても,禁煙へと行動変容する率は低い.「私に限って肺がんになるわけはない」,「タバコを吸うと精神的に落ち着く」,「肺がんになったらその時に考える」などの喫煙者の論理があり,単に医学的知識を伝達しても継続的行動変容までには至りにくい.
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