対談・連載
公衆衛生の軌跡とベクトル(5)—「福祉元年」から1970年代を中心に
橋本 正己
1
,
大谷 藤郎
2
1元埼玉県立衛生短期大学
2厚生省社会保険審査会
pp.184-190
発行日 1988年3月15日
Published Date 1988/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207647
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大谷 今回は「福祉元年」と言われた昭和48年(1973)から約10年間を話題とします.昭和48年は健保法の改正で高額療養費支給制度など医療費の自己負担をできるだけ少なくし,また年金法改正で物価の上昇があっても政府の責任で年金額をアップすることを定めるなど老後の保障を確実にしようという二本の柱からなる改正があり,またその前年の昭和47年に老人福祉法の改正が行われ,48年からいわゆる老人医療費の無料化が実施されたなどが重なって,「福祉元年」と誇らかに言っていたものです.
老人医療費の無料化は昭和40年代に美濃部都政をはじめ全国の革新自治体で進み,それらの自治体の動きを受けて,斎藤邦吉厚生大臣のときですが,国として老人医療費を無料化することに踏み切ったものです.この時代は30年代に始まった高度経済成長が,42〜43年ごろから45〜46年ごろまで加速化した時代でした.それで税収入も割合多く,地方財政も国の財政も比較的潤沢で,それに踏み切れたものです.
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