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日本人の障害者に対する考え方が,いかにも島国的すぎるのか,これまでの富国強兵的な急進的発展施策上,お荷物としか考えることが出来ない程余裕がなかったのか,腹立たしい程,私自身を含めて国民全体が“弱い者いじめ”と共に“あわれみ”“おなさけ”しか持ち合わせなくなってしまった.場合によってはそういった感情も必要があるにしてもそれは主ではない.別個に分けて考える所から矛盾が始まり,差別意識を持つにいたって問題をより一層深めているのではないか.人心の安定が人間全体を通して見る余裕が少しづつ出て来れば,強い者勝ちであってはならない,全体を見わたした豊かな国民感情が育って行くと考える.現在のところ個々に人物が現われて,隅々で身障者等にすばらしい業績を上げているが,一隅を不十分ながら照らすにすぎない.日本人全体が,余裕を持って個人の社会と全体の社会を考える時始めて福祉元年と言って良いのではないか.
昨今,ゼニがすべてものを言う世の中,何とかアニマルと言われるまでに,人の心は走り,国全体を外から見れば,札束が舞う経済大国とまでなったが,物の豊さでは,確かに恵まれた階層の人を中心に,全てにわたって還元出来たようであるが,しかし,心の豊さや,生活の安定とは無関係のようで,しいて言えば,消費経済がレベルアップした分だけ,平均的庶民がそれに遅れまいと,ゼニに追い廻されている気がする.狭い国土に輸をかけて,有効面積の極端に少ない上に多くの人口がひしめきあい,のんびり考える間もないのが当然かも知れないが,こと身障者に関しても施策があまりにも片寄りすぎて,公害と同様の事が起こっているのではないかとも思う.一面だけを見て良いと思ってもあれこれ弊害を考えて進めなくてはまずい.
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