特集 栄養疫学
循環器管理と栄養
内藤 雅子
1
,
根岸 龍雄
1
Masako NAITO
1
,
Tatsuo NEGISHI
1
1東京大学医学部成人保健学教室
pp.115-121
発行日 1985年2月15日
Published Date 1985/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206999
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■はじめに
わが国では,1950年がいわゆる健康管理にとっては一つの曲がり角であった.というのは,この年までの死因の第1位は結核症であり,翌年からの死因第1位は脳血管疾患となったからである.戦前からの結核症の疾患管理の主題は早期発見,早期治療であったが,現実の治療には,まだ特効的抗生剤,化学療法剤は一般的には流布していなかったので,いわゆる大気・安静・栄養療法が中心であった.ここでの栄養は高蛋白,高エネルギー,高脂肪などであったが,長い戦争の間と戦後には,一般的には,これらはどれも得難い栄養であり,食生活には社会的階級が直ちに反映するのであった.結局,結核管理の成果は戦後に持ち越されることとなった.実は,結核症の疾病構造の変化は,わが国では,すでに1920年ごろにおこっていたために1),戦後,急速に死亡率の低下を見ることとなり,しかも,その速度は極めて早いものであった.
1951年,死因第1位となった脳血管疾患に対して,血圧測定から始まる循環器管理が進められることとなった.その後は,1983年の「老人保健法」の施行までに,心電図検査,眼底検査,各種の血液検査が行われるようになった.現在の循環器管理では,かつての結核管理に比べて検査項目は極めて多い.
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