特集 母子関係
保健行動と母子関係
廣瀬 恭子
1
Kyoko HIROSE
1
1自由学園
pp.680-685
発行日 1987年10月15日
Published Date 1987/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207549
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■はじめに
「三つ子の魂百まで」という諺があるが,百歳まで生きることが夢ではなくなった現代長寿社会において,乳幼児期に保健行動の礎を築くことの大切さを痛感させられている.ことに,「高知県の沖合で,雷雨の中サーフィンをしていた高校生らに落雷,6人が死亡,6人がやけどなどで重軽傷を負った」というような報道に接すると,自然災害とだけではすまされない,身を守る教育の欠如を思い知らされる.国民衛生統計を見ても事故による若者の死亡が増え続けており,生涯の保健行動に警鐘が鳴らされている証拠であると見てとることができよう.
また,現代のように公害の多い複雑な社会においては,自分自身の健康を自分で守っていくことが難しくなっている.これは,水俣病やサリドマイド児等の悲劇に言及するまでもないことである.しかしこれとは逆に,自分は何もしなくても,安全が保証され,健康が守られる環境が用意されていることも多く,良くも悪くも人まかせである.従って,厳しい自然と戦ってきた人々や,現在ほどにはマンモスではなかった数十年前までの子どもたちには備えられていた危険を避ける感覚が,急激に失われつつあると言っても過言ではないであろう.
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