特集 公害とその後
大気汚染による健康影響
吉田 克己
1,2
Katsumi YOSHIDA
1,2
1三重大学
2(財)京都工場保健会
pp.512-515
発行日 1987年8月15日
Published Date 1987/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207512
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■戦後の大気汚染問題
大気汚染の問題は戦前においてもいくつかの事例があり,有名なものとしても東京・浅野セメント事件,大阪アルカリ事件などいくつもの例がある.しかし,大気汚染の問題,特にその健康影響の問題に,大きな社会問題としての強い関心が向けられるようになったのは第二次大戦後のことであるともいえよう.
このようなことの背景には,第二次大戦における「技術革新」ということがある.この技術革新は,内容的には,今日のいわゆるハイテクとよばれる革新技術の展開とは違って,生産力の巨大化を中心としたもので,例えば,発電機1基当たりの出力は長い間せいぜい4万kw程度までで特別の出力上昇はなかった.戦後はまず米国よりその出力の大幅増大が始まり,日本においても昭和20年代後半頃より,その一基当たり出力の急激な上昇,巨大化が起こり,30万kw,50万kwになり,昭和40年代には100万kwを突破するなど,20〜30倍に及ぶ巨大化がみられるようになった.鉄鋼産業においても,あれだけ生産力増強が叫ばれた第二次大戦中で,最大の生産をあげた時(昭和17年)でも,粗鋼年産700万トンまでであったが,これは今日の1製鉄所での生産可能な範囲となっている.
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