特集 学童の保健
大気汚染の児童への影響とその対策
吉田 亮
1
,
本宮 建
1
,
安達 元明
1
1千葉大公衆衛生学教室
pp.217-225
発行日 1970年4月15日
Published Date 1970/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204057
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はじめに
大気汚染が健康に悪影響を及ぼすことは,もはや疑いのない事実である.時間的に考えると,いくつかの急性エピソードにみられたような,高濃度汚染による急性影響,数週から数ヵ月続く大気汚染による亜急性影響,数年間の汚染による慢性影響に分けられるが,最近の研究の方向は,比較的低濃度の汚染の慢性影響に向けられているようである.この場合,小児,特に学童を調査対象とすることの利点は,成人の場合に問題となる喫煙および職業の影響を除外できること,大気汚染の影響を早期に発見しうること,すなわち1つの疾病の前段階ないしは,発病初期から観察しうること,一定期間の連続的観察が可能であること,対象の動員,把握が容易であること等々があげられよう.さらに学童の健康状態の評価は,その居住する地域住民の健康度をよく代表しうると考えれば,学童についての調査研究の価値はきわめて大きいものであると考えられる.逆に問題となる点は,慢性気管支炎のような大気汚染の影響と思われる疾病を,その完成された極限の姿でとらえることはむずかしく,主として機能面でしか影響がとらえられないことである.
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