特集 公害問題—その新しい考え方
大気汚染と判定基準
吉田 克己
1
1三重大・公衆衛生
pp.64-69
発行日 1969年2月15日
Published Date 1969/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203816
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気管支喘息の増大
先にGoldsmithは,図1に示したような米国カルフォルニア州の気道性疾患の死亡率の推移を示し,肺結核の急速な減退にかかわらず,新たに気管支炎,喘息,肺気腫といった,より治療の困難な疾患群の死亡が上昇していることを示し,これらの疾患のもつ呼吸生理学上の特性に基づいて,これを非特異性慢性閉塞性肺疾患(non-specific chronic obstructive lung diseases)として一括した.
このような閉塞性肺疾患の疫学的増大は,大気汚染の問題とからんで,日本においても注目される内容をもってくるようになった.図2に示したのは,四日市市におけるこの閉塞性肺疾患死亡率の推移であるが,近年著明な上昇を示している.日本での閉塞性肺疾患死亡の状況は,気管支炎,喘息が相半ばしているが,気管支炎死亡が従来比較的農村部で高かったことから,閉塞性肺疾患死亡率はむしろ都市部の方が若干低い傾向にあり,また,全体として年々漸減傾向にあったのであるが,四日市の汚染地区では急上昇の傾向をもっていることが示される.同様な問題は,英国においても気管支炎死亡が常に都市部に高いことが示され,またその都市のSO2,濃度と気管支炎死亡率が相関関係にあることが報告されている.
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