扉
Quality of lifeとQuantity of life
上田 聖
1
1京都府立医科大学脳神経外科
pp.593-594
発行日 1990年7月10日
Published Date 1990/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436900096
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症例検討会等で優位半球の,あるいは劣位半球であってもmotor area近辺に発生した悪性脳腫瘍の症例が呈示されると必らず出てくる言葉がQuality of life,あるいはuseful lifeという言葉である.昨今の医療界で殆ど流行語に近いこの言葉を口にする人は悪性脳腫瘍の治療に対しては消極的な意見を持つ人に多い.あらゆる治療法を駆使してもたかだか1年程度の生存期間しか期待出来ないのであれば,extensiveに腫瘍を切除してneurological deficitを強くしたり,新たに作ることは好ましくなく,survivaltime(Quantity of life)を犠牲にしても現状維持が出来るだけ長くなるように保存的治療に努めようという意見である.悪性脳腫瘍とりわけGlioblastoma multiformeの治療に対して消極的な立場をとる人は古くからあり,その主旨も概ねこれと同じであろうと思われるが,これにQuality of lifeという言葉が新しく附加されたために説得力を生じた.
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