特集 水と空気
生活雑排水をめぐって
須藤 隆一
1
Ryuichi SUDO
1
1国立公害研究所技術部
pp.380-386
発行日 1987年6月15日
Published Date 1987/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207483
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■はじめに
わが国における水質汚濁は,一時的な危機は脱したものの,ここ数年水質回復は横ばい状況が続いている.水質の環境基準(生活環境項目)の達成状況からみると,31.0%の水域が不適合である.特に湖沼の汚濁が著しく,58.8%の湖沼が環境基準を超えている.この現象は富栄養化と呼ばれており,琵琶湖や霞ケ浦のように大きな湖沼はもちろんのこと,公園の池や濠にまで及んでいる.水域の汚濁負荷のうち,最も大きな割合を占めるのは生活排水であり,たとえば印旛沼,手賀沼では70%を超えている.生活排水の負荷の大部分は,生活雑排水に由来している.
生活排水は,家庭排水,生活系排水,生活汚水などとおおむね同じ意味であり,人間の生活活動に伴って排出される汚水である.しかしながら,公共下水道に取り込まれる場合を家庭下水,下水道に放流されない排水を生活排水と区別して呼ぶこともある.一方,生活雑排水というのは,生活排水のうちし尿を除いたものである.すなわち,厨房,風呂場,洗濯機などから排出される汚水が生活雑排水である.し尿は,汲取りおよび水洗便所とも,未処理のまま公共水域に放流されることは禁止されている.一部自家処理はあるものの,し尿排水は通常はなんらかの処理が施され,消毒後公共水域に放流されている.
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