特集 水と空気
大気汚染の疫学的考察
溝口 勲
1
ISAO MIZOGUCHI
1
1北海道大学工学部衛生工学科
pp.387-391
発行日 1987年6月15日
Published Date 1987/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207484
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■はじめに
生命を維持していくためにわれわれは絶えまなく空気を呼吸しているが,成人1人は1日約10m3の空気を吸いこみ,約0.5m3の酸素を消費している.人は食物なしに50日間,水なしに5日間は生きられるが,空気なしには5分間しか正常な生命活動を維持することが出来ない.成人の肺胞表面積は約70m2あり,ここでガス交換が行われている.今から2,400年前ヒポクラテスは,清浄な空気・水・土地が人の健康に重要な意味をもつと述べている.
空気の質と人の健康の関係の医学的解析のはじまりは,287年前のラマッチーニの「働く人々の病気」のなかでの,鉱山での塵肺症や鉛中毒の記載である.ついで近代化学産業における鉛,水銀,強酸,有機溶剤などによる種々の中毒例など,労働衛生の対象として展開された.
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