現代の環境問題・4
水質汚濁—湖沼の汚れ
須藤 隆一
1,2
Ryuichi SUDO
1,2
1東北大学工学部
2国立公害研究所水質土壌環境部
pp.480-484
発行日 1990年7月15日
Published Date 1990/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900134
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●はじめに
昭和40年後半から公害防止に対する国民の強い関心と,国・地方公共団体および民間企業の強力な公害防止対策,ならびに第1次石油危機以降経済が安定成長へ移行し,産業構造の変化や省資源・省エネ対策の進展もあって,直接生命の危険を脅かす公害は解消され,環境は全般的に改善されている.水環境においてもこの傾向は例外でなく深刻な状況は脱しているが,多様化,拡大化している.著しい公害はおおむね消失したものの,環境問題として認識すべき課題は増大している.その一つが湖沼(ダム湖を含む)の水質汚濁である.
現在問題になっている湖沼の水質汚濁は,有機物が流入して水を腐敗させたり,あるいは毒性物質が流入して水生生物を殺滅させるものではない.湖沼のなかに藻類(植物プランクトン)や水生植物が異常に増殖して,水質悪化が引き起こされる水質汚濁であり,富栄養化とよばれている.富栄養化は,窒素およびリンなどの栄養塩類の流入によって進行する.すなわち,生活排水,工場排水,汚濁河川水,山林や田畑からの流出水などの湖沼への流入,および底泥からの溶出によって引き起こされる.この富栄養化は,人口が集中し,低地にありしかも浅い湖沼で著しく,アオコ(青粉),水の華,淡水赤潮に代表される今日の大きな社会問題となっている1).
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