特集 家族
青年期における家族の問題—家族カウンセリングの立場から
国谷 誠朗
1
Nobuaki KUNIYA
1
1(財)日本交通公社能力開発室
pp.801-806
発行日 1986年12月15日
Published Date 1986/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207378
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■はじめに
青年期は自分自身の主体性を確立し,依存していた親という保護者から離れる時期である.E.H.エリクソンのライフ・タスクの理論によれば,青年期の中核となる人生の課題はアイデンティティ(自我同一性)の確立であり,その課題の失敗は自我同一性の拡散という,病的な結果を招くことになる.
青年期の心身症や精神衛生上の諸問題が,家族関係を密接に反映していることは今日,臨床家の間で常識的ことがらになっている.青年期の患者たちは家族との関係を否定したり,その束縛から脱出しようと必死の努力をしているのにかかわらず,家族関係のきずなは重いストレスとして彼らにのしかかっている.青年期の患者をかかえる医師や教育相談員は,「家族がもっと協力さえしてくれたら」という切実な願いをもつことが多いであろう.治療や相談指導が一応成功したかのように見えても,ひとたび家庭に帰ると問題が再発するというケースがあまりにも多いのである.
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