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特集 カウンセリング
医療におけるカウンセリングの実際―家族のカウンセリング
Counseling in Medical Service-Family Counseling
岡堂 哲雄
1
Tetsuo OKADO
1
1文教大学人間科学部(心理)
1Bunkyo University, Faculty of Human Science.
pp.816-818
発行日 1983年12月15日
Published Date 1983/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102986
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はじめに
家族の間柄が個人の心身の健康に大きな影響を及ぼすことは,心理療法やカウンセリングの成立以前からよく知られていた事実である.かつて家族は,稼ぎ手の夫の重傷とか子の死亡といった家族危機(family crisis)に直面したときには,血縁による親族の支援体制の援助を受けるか,地縁による隣人からの協力が容易に得られたものである.また,所属の寺社や教会からの宗教的扶助が与えられ,家族危機を解決するのが,大方の慣例であった.しかし,今日の社会では,血縁や地縁の相互扶助的体制が弱体化し,個々の家族はいわば自閉化し,孤立化しているように見える.子育ての問題にしても,血縁・地縁の先輩に助言を求めるよりも,赤ちゃん110番やその他の専門機関に電話で指示をあおぐことが多くなっている.老親の扶養にしても,親族や地域の協力を得るのは難しく,国や自治体の福祉行政に頼らざるを得ない場合も少なくない.
慢性病者や障害者に対する援助もまた同様で,親子の情や血縁のきずなを強調するだけでは,親族からの協力は得られにくくなっている.それでは,病者や障害者の生存と幸福のためには,どうすれば家族の支援が得られるであろうか.精神保健の分野で最近著しい発展をみせている家族カウンセリングが役立つはずである1).本稿では,家族カウンセリングの基本的考え方と方法に触れた後で,リハビリテーション専門家にとって関心のある家族力動(family dynamics)をめぐる問題点を指摘してみようと思う.
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