特集 家族
母子保健と家族
長谷川 浩
1
Hiroshi HASEGAWA
1
1東京女子医科大学看護短期大学
pp.796-800
発行日 1986年12月15日
Published Date 1986/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207377
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■はじめに
わが国の母子保健サービスは,戦後40年間に,母性・小児医学の発達を基盤にした各種法律制度の整備と保健所や医療機関の不断の実践に支えられて,飛躍的な前進を遂げつつある.もちろん,健康問題に悩む多くの人々の切実なニードとして,さらにきめ細かいサービスが求められているし,急激な社会変化に伴う健康阻害要因としての環境問題とか母子の疾病構造の変化などに対して,保健サービスの現状が合わなくなってきているのではないかという識者の批判もある.これらの要望や批判は,母子の健康増進に向けての重要な問題提起であり,母子保健サービスがつねに社会のニーズに応えるものであるかぎり,重視されなければならない.
しかしながら,母子保健サービスの現状は,わが国の乳児死亡率の急激な低下とか各種難病児の治療にみられるように,基本的に高く評価されてよいであろう.妊娠初期から出産,そして乳幼児期の各年齢段階における健康チェックは実に丹念に行われており,またその利用度も高く,疾患の早期発見と治療に貢献している.従って,今後の改善の余地はあるにしても,主として身体医学的な面での母子保健サービスは効果的に機能しているとみてよい.ただし,母子の心理・社会的な問題についての援助には,まだまだ課題が多いように思われる.
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