特集 女性と健康
家庭看護と女性
川村 佐和子
1
Sawako KAWAMURA
1
1都立神経病院医療相談室
pp.107-111
発行日 1986年2月15日
Published Date 1986/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207208
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■現在の家庭看護をめぐる状況
医療機関側の条件(病床回転など)によりやむなく在宅療養に移行する人々がある反面,「自分が生まれた家にいると心が落ち着く」「自分が建てた家にいたい」「家族とともにいたい」「子供とはどんな時でも一緒にいたい」「ともに苦労してくれた人だから,出来る限り尽くしてあげたい」「限られた生命なら,自分の思いどうりに行動したい」患者,家族自身がこのように確立された自我に基づいて,療養の場を自宅に求める場合があることは事実である.患者の人権重視の考え方や医療の現時点での限界について広く考えあうようになって,近日の医療の場の選択は,医療内容や医療側の効率性だけでなく,個人生活や社会的あり方に関する観点も重くみられるようになってきた.在宅療養つまり自宅療養の社会的比重が増してきた背景である.
医療機関が発達する以前では,自宅以外に療養の場はなかったし,日本の家族制度下にあっては,病める時,貧しき時は家族内の相互扶助で対応していくことが当然だと思いこまれており,社会に漠然とある意識では「一般的に推測される程度の症度では,患者の自宅療養」に抵抗は少ないようである(現実直面時でこの意識は突然変化するのだが).また,ケアを担当する家族は従来の家庭生活習慣では妻,娘,嫁(家政婦,看護婦)と女が行ってきたから,いまなお先見的に「女がやり通すもの」と思いこまれている,
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