特集 糖尿病—臨床から公衆衛生へ
若年性糖尿病のこれからの課題—学校における患児の実態を中心にして
北川 照男
1
Teruo KITAGAWA
1
1日本大学医学部小児科
pp.252-256
発行日 1984年4月15日
Published Date 1984/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206847
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■はじめに
わが国のインスリン依存性小児糖尿病の発生頻度は,幸いなことに米国の約10分の1,スヵンジナビア諸国の20〜30分の1といわれている1).このように,わが国において小児糖尿病の発生頻度が著しく低いのは,食生活,気候などの環境要因の差異によるよりも,遺伝的要因の差異が大きな役割を果していると考えられている.その理由は,それらの欧米諸国とわが国のインスリン依存性小児糖尿病の年齢別発生数のパターン,季節別発生数のパターン,および発症時の症状,治療に対する反応性など,いずれも極めて類似しており,単位人口当たりのインスリン依存性糖尿病にかかりやすい体質をもつ小児の数が,欧米に比較してわが国では著しく少ないのではないかと考えられているからである2).これを裏付けるように,糖尿病の発症に密接な関連をもつとされている遺伝子型,すなわちHLA型が日本人と欧米人とでは異なる上に,一般人口におけるその分布頻度が著しく異なるといわれており3),このような糖尿病の発症と関連をもつ遺伝的要因の差異が,わが国のインスリン依存性糖尿病の発症数の少ないことと関連をもつと考えられている.
このように,こどもの糖尿病,特に難治性のインスリン依存性糖尿病の発生数が著しく少ないことは,わが国の小児にとって幸いなことである.
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