講座
健康被害の疫学—その理論と実際(その2)労働者保健と疫学—学習体験より《下》
東田 敏夫
1,2
Toshio HIGASHIDA
1,2
1関西医科大学公衆衛生学
2関西医科大学附属第一看護専門学校
pp.762-770
発行日 1982年11月15日
Published Date 1982/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206610
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〈社会疫学〉への志向
人間労働にかかわる理化学的・生物学的因子に関する究明は,もちろん,ますます深く追求されねばならない.それとともに,労働者の健康問題は,単なる生物現象ではなく,その本質として,すぐれて社会現象であり,労働条件,雇用事情,生産関係,社会経済的・政治的諸関係によって規定されているという事実に対する認識を欠いてはならない.
もともと資本性社会における労働による健康被害は,その本質として,人間労働の労働力・商品化による人間疎外の所産である.資本の論理として〈最大限利潤追求の原則〉は不変充用上の節約から安全衛生投資抑制と労働強化を招き〈合理化〉を必然とする.これらの社会機構的要因こそが,労働災害,職業病を続発させ,さらには広く企業公害や有害商品を生んでいる.加えて低賃金,失業,社会資本抑制,医療保障・社会保障の立ち遅れなども関係して,労働者階級の健康と生活に階層分化を生みだしている.
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