特集 精神衛生の展開
精神科リハビリテーションの実際
臺 弘
1
Hiroshi UTENA
1
1社会福祉法人創造印刷(東京,調布)
pp.930-935
発行日 1981年12月15日
Published Date 1981/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206438
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精神科リハビリテーションの実際を語る時には,一般論や理念から始めると,何となく現実から離れてそらぞらしくなってしまう.といって,個々の事例に則する時にしか実際が語れないとなると,経験はいつまでたっても個人にとどまってひろがらない.それに精神科リハビリテーションは一括して述べるのがそもそも無理なので,例えば,分裂病者のリハビリテーションをアルコール症のそれと一諸に論ずるのは窮屈である.また同じ人でも時期により状況に応じて違ってくるものである.そこで本文では,リハビリテーション活動の実践の展開に沿いながら,各段階ででてくる諸問題を筆者の経験を交えて述べることにした.
筆者の意見1)では,精神科リハビリテーションの眼目は,対象者の「生活のしづらさ」を克服するための援助にある.問題を生活レベルにしぼるという点が特色で,これによって,それにかかわるさまざまの職種の人々が協力し合えるようになるのである.医学的にはいろいろな診断をもつ人々も,「生活のしづらさ」という点から見ると,かなり共通した苦労に悩んでいる.それらは,1)生活の仕方のまずさ,2)人づき合いの上でのトラブル,3)就労能力の不足,4)生活経過の不安定さ,5)生きがいの乏しさなど,である.もともと生活のしづらさとは主として病歴にかかわって生じたものではあるけれども,本人の性格,生活歴,現在の病状,おかれている環境状況によっても規定されている多次元的な現象である.
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