特集 精神衛生の展開
「学」としての精神衛生をめざして
逸見 武光
1
Takemitsu HEMMI
1
1東京大学医学部保健学科精神衛生学講座
pp.914-917
発行日 1981年12月15日
Published Date 1981/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206434
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わたくしに与えられた題は「精神衛生の原理」という途方もないものであった.しかし,よく考えてみると,編者がわたくしにこのような説問をされても不思議ではないように思う.わたくしが"保健学における精神衛生学"と"精神医学における精神衛生学"は全く同じといえるのか,等々の議論をかなりしばしば同僚と交わしている状況を,少なくとも保健学の仲間たちはよく知っているからである.
ところで,10余年前,わたくしが東京大学の精神衛生学教室に着任した当時,奇異に感じた状態が幾つかあった.その1つは,教室で作った公用罫紙や印に「学」の字が無いことであった.「精神衛生教室」となっていたのである.公的な便覧等には「学」の学が付いているのに,自分の方から出す文書にはそれが無い,ということは不思議としかいいようが無かった.いま1つは,保健学科の他の総ての教室が,「母子保健学」「保健社会学」等と,保健という呼称がつけられているにもかかわらず,わたしどものところのみは「衛生」という呼称を使っていることだった.したがって,10余年前の着任当初より,「わたくしたちは,いま,ここで,何をやろうとしているのか」,「わたくしたちが,いま,やっていることは学問の外のことなのか」,「わたくしたちが,いま,やっていることを何と呼べば良いのだろうか」といった説問を絶えず自分自身に課さなくてはならなかった.
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