Japanese
English
特集 精神鑑定
薬物依存と精神鑑定
Drug Dependence and the Court Psychiatry
逸見 武光
1
Takemitsu Hemmi
1
1東京大学精神衛生学教室
1Dept. of Mental Health, University of Tokyo
pp.1345-1350
発行日 1978年12月15日
Published Date 1978/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202865
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Ⅰ.薬事関係法犯の場合
薬物依存そのものが犯罪でないことは,一般に当然のように考えられているようだが,例えばアメリカ合衆国の場合,カリフォルニア州麻薬取締法で有罪となったRobinson Caseに対し,1962年に連邦最高裁判所が違憲判決を下すまでは,薬物依存が証明され,使用された薬物が法によってその流通を規制されている時には,被告人がその薬物の入手方法を合法的に説明し,裏付けない限り,有罪とする考え方がしだいに強くなっていた6)。1962年当時,カリフォルニア州はヘロイン乱用対策に追われていたので,司法はとにかく,行政当局はこの連邦最高裁判所の決定に大きなショックを受け,以後の施策にかなりの修正を加えざるをえなかった。
わが国でこれに類した判例があるかどうかをみてみよう7)。昭和29年,同31年12月(大法廷),同33年7月の3回にわたり,最高裁判所は「麻薬取締法は公共の保健衛生の要請上,その取り扱いについて厳重な制限規定を設けたもので,かかる制限は公共の福祉のために必要であるから,右制限規定が憲法11条及び13条に違反するものでないことは……」として,麻薬取締法を合憲と判断した。覚せい剤取締法に対しては最高裁による同様の判断が昭和31年6月と9月に出されており,大麻取締法に対しては東京地裁が昭和49年8月に「違憲性を認めることはできない」と判断している。その他の薬物の取締りに対して違憲性が問題になった例は聞かないから,現在,現行の依存性薬物に対する流通機構の規制とその手段については特に法律的疑義は無いものと考えられる。
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