特集 食品衛生
変異原性試験とがん原物質チェックの現状
石館 基
1
Motoi ISHIDATE
1
1国立衛生試験所安全性生物試験研究センター変異原性部
pp.385-390
発行日 1981年5月15日
Published Date 1981/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206312
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■はじめに
わが国において種々化学物質の変異原性への関心が高まったのは,AF-2事件に始まる.豆腐に殺菌剤として使用されていたAF-2には,微生物に対する突然変異誘発性があるほか,哺乳動物細胞に対して染色体異常誘発性があり,同時にマウスに対して発がん性が認められ,最終的には食品添加物のリストから除外されることとなった.
厚生省では,昭和49年の食品衛生調査会を通じて,食品添加物などの遺伝的安全性検討の暫定基準を作成し,従来の種々の毒性試験に加えて変異原性試験の有用性を指摘した1).この基本的な考え方には,微生物,昆虫,あるいは哺乳動物細胞などに対して突然変異を誘発する物質は人体にとって有害である,という認識がある2).化学物質の変異原性の検出は,特定の実験生物については比較的容易であるが,人体への危険度を推定し,もしくは証明することは必ずしも容易ではない.したがって,いくつかの検定方法を組み合わせ,種々の化学物質に原因すると思われる遺伝的障害性を予測することはきわめて重要である.
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