綜説
ハブと人間の住み分け—ハブ問題に対する公衆衛生学的アプローチ
吉田 朝啓
1
Tomoaki YOSHIDA
1
1沖縄県公害衛生研究所
pp.330-335
発行日 1981年4月15日
Published Date 1981/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206300
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はじめに
沖縄県内に生息する陸生毒蛇のうち,公衆衛生上対策を必要とするのはハブ(Trimeresurus flavoviridis flavoviridis;Hallowell, 1860)とサキシマハブ(Trimeresurus elegans;Gray, 1849)である.この2種の毒蛇は県下53市町村中,県土のおよそ85%,県人口のおよそ93%(97万人)を擁する41市町村内に生息している.市街地の非生息部分を除けば,実際の生息地域面積および人口はやや減少するとはいえ,沖縄県のハブ問題は全県的な重みを持つといえる(図1).
マラリア,フィラリアなど主要な感染性風土病が消滅した今日,ハブ咬症は沖縄県における最大の公衆衛生上の課題として解決が求められているが,ハブ抗毒素の開発研究など被害者対策の著しい進歩に比較して,病因および環境対策の進展があまりみられず,ハブ問題の抜本的対策案が示されたこともない.
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