特集 日常生活の中の健康づくり
健康づくりと運動処方
道場 信孝
1
DŌBA, Nobutaka
1
1(財)ライフプラニングセンター
pp.230-237
発行日 1981年3月15日
Published Date 1981/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206276
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■運動の功罪
人は誰でも健康である間は必然的に体を動かすし,また体を動かすことによって体力は維持されている.しかし,何らかの理由によって身体活動が低いレベルに拘束されると,程なく人の体は安静状態に適合して内部変動を生じ,このような状態で肉体的ストレスにさらされると身体は正常には反応できなくなる1)2)3).このように活動状態に適合している身体機能が安静状態に適合する機序を脱調節(deconditioning)と呼び,種々の疾患で安静が強いられるときには,ほぼ2週間で明らかな脱調節状態に陥る.脱調節状態は安静時および運動時の頻脈,起立性循環調節障害,筋力低下,骨からのカルシウム離脱,平衡調節の障害,視覚異常などで特徴づけられ,リハビリテーションはこのような状態を身体トレーニングによって再調節することを目的としている.近代の人間社会では,原始時代のそれと比較して身体活動のレベルが極度に低いレベルに落ちこんでいるため,慢性の脱調節状態に陥っているとともに,過剰栄養による肥満,喫煙の習慣,ストレスの多い社会環境などが虚血性心臓病の発症頻度を著しく高めていると考えられる.
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