特集 日常生活の中の健康づくり
日常生活における健康づくり
横野 靖
1,2
Osamu YOKONO
1,2
1東京外国語大学
2東京外国語大学保健管理センター内科
pp.188-192
発行日 1981年3月15日
Published Date 1981/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206266
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■はじめに
心を静かにして考えてみると,人間各人の健康というイメージは,病気ということと切り離しては考えられない.一方,1940年,国連世界保健機構が定めた健康大憲章の前文にある健健の定義は,「健康とは,身体的,精神的および社会的に完全に良好な状態であって,単に疾病がないとか虚弱でないというだけではない」と述べている.
前者は各個人の立場の健康であり,後者は社会としての健康についての目標であり,いわば行政的立場の健康観であるといえるかもしれない.この両者は,実際には決してかけ離れたものではない.平均寿命が50歳に満たず,そして食物も十分ではないし,コミュニケーション,交通も未発達であった時代,また経済的,社会的格差のために,生活環境が互いに大いに異なった時代の人々の間で交わされた挨拶,たとえば「達者で」とか「ご機嫌よう」という言葉には,その時代の人々の健康観とともに,病気の範囲に対する,また生活態度に対する考え方が巧みに表現されていたと考えられる.その手段の可能度あるいは実効性の範囲をひとまずおくとすれば,その時代は人々が各個人の健康への道を各人でいちおうは制御し得た時代であったと考えられる.
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