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高齢者の健康づくりとして「はたらく」社会参加を促すしくみ
日本では,超高齢社会の高齢者とその暮らしを地域で支えるしくみとして,地域包括ケアシステムが導入され,その実現が進められてきた。2025年度は,導入当初に目標とされた完成年度にあたる。介護保険導入後,また地域包括ケアシステムの概念導入後,高齢者が単に社会に「支えられる」存在ではなく,高齢者自身が社会や他者を「支える」側となることへの期待はより強まってきた。そして,それを後押しする理論やしくみが注目されている。
例えば,横浜市が実施するよこはまシニアボランティアポイント事業〔2009(平成21)年より実施〕は,横浜市が推進する高齢者向けの地域貢献プログラムである註1-2。65歳以上の市民が,高齢者施設でのレクリエーションの補助や施設の清掃,子育てサロンや地域ケアプラザ等,横浜市が認定する先での地域貢献イベントなどのボランティア活動に参加すると「ポイント」が付与される。貯めたポイントは,年間8000円を上限として現金に換えることができる。類似の事業は厚生労働省の認可以来各地で実施されており,孤立防止や運動機会の増加,世代間交流の効果があるとされる註3。参加者の認知症リスクや要介護状態となる率の低下傾向が報告されており,結果的に医療・福祉の費用削減にも寄与している。このようなポイント制度は全国で導入例があり孤立防止や健康増進に有効だが,表向き経済的インセンティブに留まる点は対症療法的な側面がある。実態として,これに参加する人々は社会貢献や社会参加による自己有用感など,精神的なインセンティブも重視していると考えられるが,そのような価値観を共有していく機運やしくみが重要である。

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