本の紹介
三浦 豊彦 著『〈労働科学叢書52〉労働と健康の歴史』(第三巻)—明治初年から工場法実施まで』
西川 滇八
pp.798
発行日 1980年11月15日
Published Date 1980/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206193
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本書は『労働と健康の歴史』第三巻で,古代から幕末までをまとめた第一巻が1978年11月に出版されてから,本年二月に明治初年から工場法実施までの第二巻に次いで,矢継ぎ早に刊行されたものである.著者が20年来書きためた研究業績を取りまとめて読者のために発刊された芳著である.わが国の労働と健康の歴史に盛衰があるとすれば,悲惨な労働から合理化への曙光をまさぐり,手応えのあった大原孫三郎の倉敷労研創立から満州事変の開始される昭和初期までが豊富な写真や統計資料を駆使してまとめられている.
全篇は序章を含めて15章から成り,巻末に労働と健康年表(1917〜1933年)が収録されており,総索引が付いている.特記すべきこととしては,序章において19世紀から20世紀初頭わたる欧米の労働衛生が,本書所載のわが国の労働衛生の国際的背景を描いてくれている.第1章は大原社会問題研究所創立前後で,高野岩三郎・暉峻義等の社会調査が述べられている.第2章は農商務省工場鉱山衛生調査室と倉敷労働科学研究所創立時代で,当時の労働衛生の研究状況と研究者が紹介されている.第3章は農村保健衛生調査で,第4章が女工哀史,炭鉱夫哀史時代を紹介している.
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