論考
疫学からみた日本の食中毒
稲葉 裕
1
Yutaka INABA
1
1順天堂大学衛生学
pp.439-442
発行日 1980年6月15日
Published Date 1980/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206105
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■はじめに
戦後のわが国の衛生状態の改善には,めざましいものがあり,平均寿命の伸長に象徴されるように,急速に欧米先進国に追いつき,追い越したとさえいえるようになった.また,各種の伝染病についても,罹患統計ではなお先進国に及ばぬ疾患がいくつかあるにしても,その減少ぶりからみて遠からず追いつくことは確実と考えられる.
しかし,食中毒に関しては,死者数の減少は確かに著しいが,患者数には,年による増減は多少あるものの,この25年間はっきりした減少傾向はみられていない1)(図1).
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