調査報告
福井県勝山地方の旧フィラリア流行地におけるフィラリア症のその後の疫学調査
吉村 裕之
1
,
近藤 力王至
1
,
大西 義博
1
,
西田 和美
1
,
赤尾 信明
1
,
鏡森 定信
2
,
上村 清
3
,
藤井 正男
4
,
徳田 育美
4
,
安川 裕子
4
,
北川 幸代
4
,
森下 薫
4
,
河北 環
5
,
竹下 外来男
6
,
藤田 紘一郎
7
,
池田 照明
7
,
藤森 千衣子
7
,
坪田 宣之
8
1金沢大学医学部寄生虫学教室
2金沢大学医学部公衆衛生学教室
3富山医科薬科大学病理学教室
4大阪予防医学協会
5福井県勝山保健所
6(福井県)勝山市医師会
7金沢医科大学医動物学教室
8栄研化学(株)研究部
pp.512-517
発行日 1979年7月15日
Published Date 1979/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205890
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はじめに
福井県のフィラリア症については,かつて陸軍省(1913年)の壮丁検血成績により敦賀連隊536名中7名に,鯖江連隊1,713名中17名にミクロフィラリア(以下,mf)保虫者が報告されている(佐々,1962年)17).その後,坪坂・竹田(1954年)23),坪坂ら(1954年)24)によって,同県勝山地方に多数の感染者があることが初めて明らかにされた.次いで坪田(1956, a・b)25)26),森下(薫)ら(1956年,a・b)14)15),Morishita, K.(1960年)13)により,勝山地方のみならず大野地方にも保虫者のあることが明らかにされたが,特に勝山地方では平泉寺,鹿谷,野向,荒土など数地区に計160名を越すmf陽性者が見出され,同地方がバンクロフト糸状虫の濃厚な感染地として寄生虫学的,公衆衛生学的ならびに臨床的調査研究がなされた(図1,表1).
ところで,ほぼ20年を経過した今日,その後の本症の疫学的調査は全くなされていない.そこで筆者ら(1977年)29)は,1976年から2年間にわたり,上記の旧流行地における本症の実態を明らかにする目的で,かつて陽性者の多く認められた地域の住民1,323名について,検血によるmfの検出,臨床症状,ことに乳糜(血)尿や陰嚢水腫,象皮病などの有無を調べるとともに,一部について本症に対する血清疫学的な検討を行なった.その結果,住民にはmf陽性者は1名も見出されなかった.
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