特集 環境アセスメント
大気汚染の植物によるモニタリング
中村 拓
1
1農林省農業技術研究所
pp.449-454
発行日 1978年7月15日
Published Date 1978/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205640
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はじめに
最近,東京都内のケヤキやスギ等が目立って生気を回復してきたことに,気づいた人も多いことであろう.これらの樹木は大気汚染に弱いため衰弱が甚しく,一時はこのままでは首都圏から消滅してしまうのではないかと見られていたのである.しかし,二酸化硫黄の排出規制が進み,その汚染が年々減少するに伴って,効果が現われてきたものと思われる.
これにたいして近年は,光化学オキシダントによる植物の被害が広域に発生するようになった.この被害はすでに昭和40年代のはじめごろから,首都圏の野菜栽培農家の間で"もや(靄)病"と呼ばれる障害として知られていたもので,春先から夏にかけてもやの濃かった日の翌日,ホウレンソウ,コマツナ,ネギ,ハツカダイコン等の葉に白い斑点が発生し,これらの野菜に甚大な損害を与えている.この被害は関係研究機関の調査,研究により,光化学オキシダントに起因すること,および被害発生地域は都市化の進んだ所ではほぼ全国的に認められることが,次第に明らかになった.大気汚染による植物の被害の研究が進み,各汚染物質ごとの被害様相が明確になったものが多いので,植物を観察することにより,その周辺の大気環境の状態を知ることができる.以下に,植物を指標とする大気汚染の調査方法について紹介する.
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