特集 地域保健と産業衛生
中小企業密集地域における保健活動
島 正吾
1
,
立川 壮一
1
,
加藤 保夫
1
1名古屋保健衛生大学公衆衛生学教室
pp.180-187
発行日 1978年3月15日
Published Date 1978/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205578
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I.緒言
近時,わが国の産業社会における急速な技術革新の浸透と生産合理化の推進は,ことに労働者の健康問題に関して,大企業と中小企業の間に質的・量的格差をますます大きなものとし,後者におけるこの課題への対応は,その企業体質とあいまって,次第に深刻な様相を呈しつつある.
さらにまた,地域における中小企業密集地帯では,この種の企業群が住民の間にモザイクのように散在し,その劣悪な労働環境要因の影響は,単に労働者ばかりでなく,地域住民の健康をも巻き込むような特異なパターンを構成している.したがって,こうした中小企業密集地域における保健活動のあり方を検討するに当たっては,一つには中小企業自体が内包する健康問題に対処すべき方策と,いま一つには地域住民の健康面からするアプローチが求められてくる.この労働者,住民が混然一体をなしている労働・生活環境に対応し,かつ効果的な保健活動を展開するためには,それなりの発想法の転換と保健行動への人的,時間的ならびに経済的起動力がすみやかに確保されねばならない.
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