特集 地域保健と産業衛生
地域における産業衛生と医師会活動
右近 文三
1,2
1広島県医師会
2広島県産業医部会
pp.169-173
発行日 1978年3月15日
Published Date 1978/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205575
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はじめに
物を造るのに工法が変わったり,新しい原料・材料が出たりして,それらによる健康障害,環境汚染,各種有害物質の解明等,産業衛生には多くの問題がある.さらに,産業従事者は年々増加し,特に中高年労働者の増加が目立ち,農村地帯においても,事業場の進出,出稼ぎ,共働き等の問題があって,兼業農家は今や90%台にもなろうとし,農業労働者の健康管理も,ただ農業労働だけを取り上げるのでは解決しない状態にある.したがって,国民の健康管理という事柄の中で,産業衛生は大きなウェイトを持ち,地域医療活動の中の一環として,真に重大な要素となっている.しかも,わが国の産業の特徴として,中小企業が99%以上を占め,産業医のうち97.5%が嘱託医でパートタイマーであるということは,真に重大なことであると考える.
このような現状から,各都道府県医師会においても,産業医部会活動を展開し,研修会の開催,実務書の出版,各種協議会の開催等の事業が行われているが,日本医師会はつとに産業保健の重要性に着目して,昭和40年来産業医学講習会を催し,48年以降はこれが労働衛生コンサルタント試験に対する認定講習になっている.わが国の産業衛生の現状を考え,労働者の安全と健康を守り,快適な作業環境づくりを促進するために,嘱託産業医の使命は今後ますます重要さを増してくると考える.
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