特集 産業医活動
医師会と産業保健活動
太田 武史
1
,
原 富夫
1
,
梶田 一之
1
Takeshi OHTA
1
,
Tomio HARA
1
,
Kazuyuki KAJITA
1
1群馬県医師会
pp.729-735
発行日 1984年10月15日
Published Date 1984/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206938
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■はじめに
第2次大戦後,飛躍的に発展したわが国の産業は各分野にわたり,輸出の振興で,国民,国家の経済力は著しく上昇した.しかし,その後にやって来た世界的不況の波は堅固な基盤を持たない,資源に乏しいわが国経済に対して多大な影響を与えた.そしていわゆる減速時代に入りわが国産業界は生産第1主義から生命尊重・自然保護・環境保全に目を向けた安定期もしくは反省期に入った.新しい技術の開発による作業内容,作業環境の変化も急激に進み,職業性疾患もその形態が変って来た.また平均余命の驚異的な伸びなどによる高齢化社会への移行が急速に起りつつあり,これに対応して定年の延長問題が検討されすでに60歳定年制の実現をみた企業もある.
このような産業界の変化に応じて,日本医師会,都道府県医師会,地区医師会においては会員に産業医活動の重要性を認識させ,その活動がより効果的に行われるよう指導し,行政側,企業側と産業医との円滑な連繋を保ち近い将来において学校保健活動と同列に,一般社会において認められるよう努力すべきである.しかし学校保健は永年にわたる関係者の努力により堅実に発展し,その基盤と方向性が確立しているが,産業保健は前述の如く戦後の急速な経済成長の下に生産性重視で労働者の環境整備,健康の維持増進がとかくなおざりにされ,企業側・産業医ともにもう一歩踏み込んだ対策が足りないようである.
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