特集 地域社会と医師会
産業保健と医師会
池内 光治
1
Kouji IKEUCHI
1
1兵庫県医師会
pp.494-502
発行日 1983年8月15日
Published Date 1983/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206737
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■産業医活動の反省
1.産業保健の重要性
第2次世界大戦により,国土は徹底的に破壊され,資源は枯渇し,日本国民は敗戦により飢餓と絶望の渕におとし入れられた.しかし,日本国民は,敗戦の虚脱より立ち上り,産業立国,輸出立国をモットーとして労働力を充実し,GNP世界第2位の今日の隆盛を見ることが出来た.これは,日本人の優秀さ,勤勉さによるのではないだろうか.資源に恵まれない日本は,産業立国,輸出立国より他に生き残る道はなかったのである.戦後は,女性の職場進出が盛んとなり,現在,労働基準法の適用労働者数は,約3,800万人で全人口の約1/3である.これらの人々が働いて,日本の今日の繁栄をもたらしたのである.又,これらの働く人々が将来の日本の発展を支えねばならない.しかし,日本国民はGNP第2位での豊かさを謳歌した代りに意外な代償を払わされた.新しい化学物質による皮膚障害,中毒症状や悪性腫瘍の発生,運搬機械や振動工具の採用のためにもたらされた障害の発生,騒音による難聴等,思わざる代償を払わされているし,作業環境の改善がのぞまれる粉じん障害等,多数の問題を惹起した.生命の危険という代償を払って手にしたものは何であったろうか.労働者の生命と健康を守る必要性が再認識され,昭和47年に新しい労働安全衛生法が施行された.常時50名以上の労働者の働く事業場に産業医をおくことが規定され,産業医の職務が規定された.
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