特集 地域医師会の新たな実践と展望
地域医師会の新たな公衆衛生活動への期待
佐栁 進
1
Susumu SANAGI
1
1厚生省健康政策局総務課
pp.620-624
発行日 1989年9月15日
Published Date 1989/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208017
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■はじめに
医学医療の高度化,専門分化の流れの中で,医師の専門医志向と患者の大病院指向が始まった.それにつれ,国民の医療の場から,地域医師会によって代表される開業医の影が,なんとなく薄くなってきているように思われてならない.かつて開業医は,地域に密着してその医療体制を全面的に支えるとともに,地域の名士としても大きな影響力と責任を持っていた.住民は医療に関係する問題だけにとどまらず,何かことあれば,自らの「かかりつけ医」に相談を持ち込むことも多かった.しかし,今は必ずしも地域住民の多くが,そういったことを開業医に期待していないのが実情ではないだろうか.
無論,開業医をめぐるこの信頼性低下の趨勢を,必然的なものとして肯定してしまうことが,ここでのテーマではない.むしろ,開業医等が地域の中で「頼れる医師」として復活することこそがテーマである.地域医師会によって代表される開業医等が,地域の保健医療活動の要として再生することは,今後一層深刻となる老人への保健・医療・福祉サービスの実効性からしても,保健医療資源の有効利用という観点からしても,これからのわが国の保健医療の推進にとって必須の要件であるように思われる.
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