綜説
食物消費構造の理論と応用
豊川 裕之
1
1東京大学・保健学科疫学
pp.358-365
発行日 1977年5月15日
Published Date 1977/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205388
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はじめに
食べることは個体保存(生存)の本能に結びついている.飢えから逃れるために,ふだんは食べないものさえむさぼり食らうし,そのためには凄惨な死闘さえも起きるほどである.同時に,あるいはだからこそ,食べることは文化の源でもあり,推進力でもある.ヒポクラテスは食べることを医学の源泉とし,食べものの選択が医学的研究の原形であるとさえ記述している1).
しかし,ここでは平常の食糧事情下における食物消費の実態について説明するにとどめ,その知見の公衆衛生活動への応用を概説する.食物消費は概略,どのような種類の食物を,どれくらい,どのように食べるかが骨子になっている.どのように食べるかには,さらに入手方法,したごしらえの方法,調理・盛り付けの方法および食卓のマナーなどが含まれているが,ここでは触れない.したがって,食物の種類とその摂取量とを中心に食生活を分析することになる.それというのも,"量"として計測できる食生活現象としては,摂取量にまさるものがないからである.量的な食生活現象としては,摂取量のほかに食事回数,食品価格などがあるが,食生活と健康との関係を追究するためには摂取量には及ばない.
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