特集 予防接種
予防接種における強制について
大崎 康
pp.624-629
発行日 1976年9月15日
Published Date 1976/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205264
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衛生状態の向上と新法の成立
自動車事故による死亡者は,毎年1万名にものぼっている.いわゆる公害による被害も日々報道されている.科学の進歩につれてわれわれの生活が近代化されるにしたがい,われわれの生活はさらに多くの危険にさらされてくる.しかし,自動車の通行を禁ずることはできそうにもないし,いわゆる公害企業といえども,一面,社会に貢献していることは否定できない.そこで国は危険防止の対策をとりつつ,このような危険な行為の存在を許さざるをえなくなる.
かくて刑法の領域においては,かかる危険な行為により被害が発生した場合にも,その違法性を問うことなく,またたとえ被害の発生が予見せられていても,その責任を問わないことがある.そうしなければ,これらの行為を行う者は,つねに絶対的な責任を負うことになりかねないからである.これら危険な行為を刑法学においては,「許された危険」ということがある.
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