特集 産業衛生と地域保健
地域と職域の健康被害—方法論序説
大平 昌彦
1
1岡山大学医学部衛生学教室
pp.457-462
発行日 1976年7月15日
Published Date 1976/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205215
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はしがき
1960年代以来のわが国は,世界に例を見ないスピードで経済の高度成長を達成した.それに伴ってわれわれの社会生活は著しい変貌を遂げたが,同時にそれはいまだ経験したことのなかった多くの健康上の問題点をもたらした.生産と消費の巨大化に伴って,環境汚染物質が工場から地域へ拡散して各地の公害問題を惹起し,あるいは生産された製品そのものの毒性が消費者の生活に障害を与えるに至った.
さらに,生産機構そのものの構造的な性格によっても,地域の住民たちが職業病の危険にさらされる労働に従事する場面が広がって,国民の健康に関しては,地域と職場とを分離して考えること自体が正鵠を得た問題の把握ではないことを示している.
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