特集 産業衛生と地域保健
環境基準と職場の許容濃度の考え方
野見山 一生
1
1自治医科大学衛生学教室
pp.451-456
発行日 1976年7月15日
Published Date 1976/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205214
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一般生活環境と労働環境における健康観—健康影響に対する考え方の相違—
大阪から東京まで550km.しかし,新幹線ならわずか3時間10分で行ける.会議が東京であっても,何も東京に泊ることもない.夕方までに会議が終わりさえすれば,大阪の我が家に帰ってゆっくり休むこともできる.新幹線という近代科学の産物から受けた恩恵は測り知れないものがある.だが一方,新幹線沿線の住民が,新幹線の走るたびに騒音や振動で悩んでいることも忘れてはならない.幹線道路沿いの住民や飛行場近隣の住民の悩みも同じようである.そこで,これら住民の騒音による健康被害について考えてみたい.
一般生活環境では,不快感,会話妨害,作業能率の低下,睡眠妨害などの日常生活の妨害が問題とされる.不快感についてみると,騒音レベルが55〜59ホンになると,「気分がいらいらする」,「腹がたつ」,「不愉快になる」,「安静が保たれない」などの情緒的影響を訴える住民が50%にも達する(昭和42年大阪市調査).会話妨害についてみると(厚生省生活環境審議会公害部会),45ホンで聴取明瞭度が80%,会話可能距離が4mであるが,60ホンになると聴取明瞭度は60%に低下し,会話可能距離は1mに短縮する(図1).また表1に示す通り,作業能率についても,加算速度が55ホンで低下し,90ホン以上ともなれば,仕事上の誤りが増えることが知られている(坂本1967).睡眠妨害は40〜45ホンで起こる.
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