特集 親子
片親
樋口 恵子
pp.544-545
発行日 1974年10月15日
Published Date 1974/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204899
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娘が4歳のときから片親稼業を始めてことしでちようど11年.片親であることはもうすっかり板について少しも違和感を感じなくなった.今さらもう1人の親に出てこられても,親子ともどもとまどうに違いない.でも,こんなことが言えるまでには,こちらとしても10年以上の年季がはいっているのであって,片親になって数年間は,ずいぶん「片親なるがゆえの問題点があるのではないか」と気を遣ったものだった.娘に対して「片親だからと言われぬように」などという馬鹿馬鹿しい小言は一度も言った記憶はないが,私のいささかの気負いや気遣いは,子どもに十分伝わっていたらしい.先年,長らく住みなれたマンションを出て一戸建ての家に移ったときに,娘は問われもしないのにこんな感想を口走ったものである.
「これでやっと安心したわ.わたしはパパが居ないのはなんとも思ったことないけれど,家がふつうの家じゃないっていうのは,ほんとはイヤだったんだ」
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