特集 人工臓器によって生きる
生き永らえるだけでも意味がある
樋口 恵子
pp.889-892
発行日 1977年9月1日
Published Date 1977/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918210
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‘生きる’と‘生き永らえる’
一昨年,75歳で死んだ母は,若いころから‘……あんなふうだったら生きていたくない’‘働けなくなったら死んだほうがマシだ’などと,生死にかかわる激しい言葉を口ぐせのように言う人だった.また‘死ぬのなんかちっとも怖くない.夜の眠りが永遠に続くだけの話だ.ただ死に至るまでの苦しみが怖い.苦しみさえしなければ,死ぬのは当たり前のことで,怖くなんかない’ともよく言っていた.
周りに長生きをあてこするようなしゅうと,しゅうとめがいたわけでもないから,彼女のホンネの死生観だったと思う.私は,ごもっともと思い,母は永遠にそう信じて一生を終わるのだろうと思っていた.
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