連載 公衆衛生のControversy
介護保険の認定はこれでいいのか
調査の技法の力量アップを/主治医意見書はいらない
樋口 恵子
1
1東京家政大学
pp.222-223
発行日 2001年3月15日
Published Date 2001/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902479
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友人の母上は86歳.骨折入院後,ようやくつかまり立ち,日によっては屋内を杖で歩行できるのが最高,という状態になった.当然,友人は今回の介護保険施行にあたって要介護認定を申請,ある日訪問調査員がやってきた.例の85項目のアンケート調査である.友人としては母にしっかり介護保険の意義を話し納得してもらったつもりでいた.友人自身,仕事を持つ身である.介護サービスはぜひとも受けたかった.
母はそもそも機嫌は良くなかったが,最初はおだやかに進行した.15〜16項目あたりにきたとき,何か気に障ったのか,プイと横を向き,答えなくなった.調査員が頼むように質問して25項目ぐらいまでは進んだが,あとは無言.娘と調査員がなだめたりすかしたり励ましたり.ようやく口を開いてくれたものの,答えはすべて,「ああ,できる」,「それもできる」,「みんなひとりでできる.だれの助けもいりまへん」.結局その日は調査不能で,再度来てもらうことになった.ところが後日,調査員が玄関に来たと知ると,ベッドの上から,「入ったらあきまへんでえ.ここは私の家やによって」と呼ばわり,家人はそれに逆らえない.母はものの判断には怪しいところがあるが,家族の目からは,痴呆なのか意地になっているのかわからない.無理に調査員に上がってもらっても前回同様の結果になるのは目に見えているので,当分介護保険利用はあきらめた,という.
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