根をおろす医師会活動
川崎市医師会・個別方式の成果—予防接種行政への協力の現状
深瀬 泰旦
1
1川崎市医師会
pp.782
発行日 1973年11月15日
Published Date 1973/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204760
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わが医師会が契約書の形式で川崎市との間に予防接種の委託契約を結んだのは昭和39年であった.茲後,現在にいたるまで,川崎市にすむ小児の予防接種を実施するにあたって,実際に手をくだしておこなうのはわれわれ医師会員をおいてはないとの自覚と使命感によって,行政としての予防接種が恙なくおこなわれていたが,ある一つの事故--あたかも予防接種と関係あるがごとくに報道された--を契機としてつよく反省がせまられ,会員の熱心な討議の末に個別接種方式が導入されたのが昭和45年11月である.
個別方式の導入に至る背景となった思想は,予防接種において求むべきは,安全性の確立と医師会としての能力範囲を定めることであり,さらに強制集合接種と私接種との経済的格差の撤廃をはかるべきであるとする考え方であった.危険な伝染病を防遏するための予防接種が,かえって被接種者の生命や健康を脅かすようなことが多発するならば本末転倒もになはだしい.安全性の追求を第一義に考えるべきことは当然である.又行政上の事業である予防接種全般にわたって委託をうけ,その全部を肩代りするの愚はさけて,あくまでも医師会としての能力範囲を逸脱してはならない.さらに法律で定められた接種をうけるに際して,接種場所による経済的負担の格差は市民の側からみれば希ましいことではない.
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