特集 予防接種
予防接種行政に求められていること
中山 ひとみ
1
1霞ヶ関総合法律事務所
pp.75-79
発行日 2014年2月15日
Published Date 2014/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102943
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はじめに
もう15年も前のことになるが,急性脳症で死亡したお子さんの両親から,治療行為が適切でなかったために死亡したのではないか,という相談を受けたことがある.医療過誤の疑いの相談を受けた場合,弁護士はカルテを入手し,医学文献を調べながら問題点を整理するのだが,所詮,医学的には素人に過ぎないので専門家の協力を仰ぐことになる.小児科の専門医は,高熱を発してからの治療行為に不適切な点はなく,死亡という結果は不可抗力だとの見解であった.「ワクチンさえ打っておけば助かった」と言った専門医の残念そうな表情が今も忘れられない.その際,いかに日本がワクチン後進国であるかというご意見も拝聴した.
その一方で,予防接種により,重篤な副作用・副反応が生じることも事実である.予防接種によって被害を受けた児やその家族が,いかに悲惨な状況におかれ,人生を狂わされたかということは,裁判記録を見れば明らかである.死亡や重篤な後遺障害が生じた者やその家族にとっては,まさに「予防接種さえ受けなければ」ということになるのであろう.
予防接種行政に何が求められるかは,端的にいえば,上記のように予防接種を受けられなかった場合の「被害」と,受けた場合の「被害」を最小限にすることに尽きると考えられる.
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