特集 法改正の動向
条件付保安処分賛成論
田村 幸雄
pp.491-493
発行日 1972年8月15日
Published Date 1972/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204523
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保安処分の必要性
最近の私の経験例から始めよう.ある出稼ぎの青年が酩酊し,前後不覚の状態で仲間を殺した.裁判の結果は,心神喪失の故をもって無罪とされ,精神衛生法により措置入院に付された.数カ月後,退院を許可されて故郷に帰った.それから数カ月後,またも飲酒を始め,間もなく前後不覚の状態で酩酊運転を行なって,一婦人を轢殺した.病的酩酊で反復犯罪を行ない,最後には殺人を行なった例を他にも経験した.現在公判中の連続強姦殺人魔大久保清が,もし,仮に彼が強度の精神病質者で,強姦殺人の欲動の抑制心が著しく欠けている心神耗弱者であると判定され,短期間後,改善されぬまま釈放され,再び同様の犯罪を犯したら,一般市民はどんな感情を懐くであろうか.こんなところに,保安処分の必要性がある.
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