資料
長崎県対島における腸チフス流行
腸チフス中央調査委員会
pp.316-323
発行日 1970年5月15日
Published Date 1970/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204080
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1967年9月,長崎県上県郡峰村吉田部落に腸チフス患者が多発した.流行の認知以降迅速的確な対策がとられ,幸いに届出された患者・保菌者数は28にとどまり,流行は短時日のうちに終熄した.しかし,同時に行なわれた数カ月前にまで遡及する疑似患者の探究調査の結果,この流行は同年4月に端を発したものであり,その後,しだいに拡大遷延して,9月になってようやく認知されるに至った経過が明らかにされた.腸チフス流行の認知がいかに困難なものかを再認識させられた事例である.しかし,離島という不利な条件を克服して遂行された,厳原保健所の防疫活動と流行調査からは教えられるところが多い.また同時に,この流行経過の分析から,腸チフスという伝染病を理解するために有益な多くの知見を学ぶことができる.
以下本流行の経過の概略を述べ,疫学調査の結果について解析する.資料は長崎県厳原保健所,同県衛生部環境衛生課,同県衛生研究所作成のものにもとづいた.また本調査の一部については本委員会の大橋誠委員が現地に行き協力した.
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